2023年3月8日水曜日

ヨセフの2年間

 ヨセフは、ヤコブとラケルのあいだに生まれたヤコブの年寄り子です。ヤコブ、すなわちイスラエルには、2人の女奴隷とレアとラケルの妻2人からの12人の子が生まれ、彼らは後の族長たちとなりました。

 同じ子どもでもヤコブは、誰よりもヨセフを愛していました。それは、ヤコブがラケルを姉のレアやジルパやビルハなどの女奴隷以上に愛していたからです。ヤコブは、ことのほかヨセフをかわいがり、袖付きの長服を作り着せてやりました。それを見ていた兄たちは彼をねたみ憎しみ、彼と穏やかに話すことができないほどでした。

 またヨセフは、夢を見る者でした。畑で束を束ねていると自分の束が真っすぐに立ち、兄さんたちの束が自分の束におじぎした、という夢を見ます。さらには、太陽と月と十一の星が自分を伏し拝んでいる夢を見、さすがに父はこれを叱りました。でもイスラエルはこれらをすべて心に留めて置きました。

 そして、いよいよヨセフに波乱万丈な人生が始まります。兄の安否を知るため羊の群れを訪ねたところ、かえって兄たちに捕らえられました。そして、銀20枚でイシュマエル人に売られエジプトに行ったのです。ヨセフは、エジプトの王パロの廷臣ポテエファルに買い取られました。

 主がヨセフと共におられたので、そこでも主の祝福が臨み、ヨセフは主人にことのほか愛され、主人はヨセフに全財産を任せるようになりました。ところが、主人の妻がヨセフに「私と寝ておくれ」と言い寄ってくるのです。ついにある日、人払いされた家の中で彼女が迫るとヨセフは上着を残して逃げました。彼女はその上着を見せて、あなたの奴隷は私を辱めようとしたのですと夫に言うと、主人は怒りに燃え、ヨセフを王の囚人が監禁されている監獄に投げ込んでしまいました。

 こうして、ヨセフは一転して奴隷から囚人となりましたが、ここでも主はヨセフと共におられ、ヨセフは監獄の長の好意を受け、囚人をお世話する役目に就きました。そして、そこに送られてきたのがエジプトの王の献酌官長と調理官長です。二人は夢を見たのですが解き明かしが困難でいら立つ様子でした。ヨセフは、神からの知恵をもって対応し、見事に二人の夢の解き明かしを果たします。

 ヨセフには、願いがありました。冤罪を晴らしたいというものです。そして今、千載一遇のチャンスが訪れたのです。「あなたがパロのもとに戻されたら、私を思い出し、恵みを施してください。私のことをパロに話してください。私はへブル人の国から、さらわれて来たのです。投獄されるようなことは何もしていないのです」。必死になってヨセフは訴えました。

 ヨセフが解き明かした通り、3日目に二人はパロのもとに戻され、一人は元の職に戻され、もう一人は処刑されました。ヨセフの解き明かしは当たっていました。ヨセフは、元の職に戻されたパロの忠臣が、自分のことをパロに話し、パロの使いが来るのを今か今かと期待して待っていたことでしょう。ところがなんと、この人はヨセフのことをすっかり忘れてしまったのです。

 ここから先のことは、聖書には出てきません。ヨセフが失望したことやどうやって立ち直っていったか、それも記載されていません。ただ、それから2年の後、神の手が動き出しました。パロが解き明かしの必要な夢を見たのです。そこで、ようやくヨセフは呼ばれ、急いで地下牢から連れ出されました。ヨセフは、ひげをそり、着物を着替えてからパロの前に立ちました。実に堂々としたふるまいです。

 詩篇105篇に、「彼のことばがそのとおりになる時まで、主のことばは彼をためした」(19節)という一文があります。両親と兄弟たちにお辞儀されるほど偉くなるという幼年ヨセフの夢の示しは、この後ヨセフがエジプトの大臣となることで成就します。溺愛を受けた幼少期から一転して奴隷に、そして奴隷から囚人へと、落ちる一方であった彼の人生ですが、最後にすべては逆転しました。

 聖書に記載されていない2年間。この沈黙の2年のうちに、ヨセフの信仰の立て上げがなされました。ヨセフの希望は一度ついえましたし、人間的な可能性はすべて断たれました。さすがの信仰者ヨセフも、今回ばかりは失意のどん底に置かれたでしょう。しかし、神はヨセフを捨ておかれなかったのです。神はご自身を望みとすることをヨセフに教えられました。そしてついに神の時が来ました。この後、ヨセフは飢饉(ききん)の中、全イスラエルをエジプトに呼び寄せ養います。このためにヨセフは先んじてエジプトに送られたと聖書には書かれています。このヨセフの一生を思うにつけても、神のご計画は何と偉大なものかと、驚嘆してやみません。

 MIKOE NEWSから転載」 2023年3月8日、リンク先:https://www.mikoe-news.com/ 

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